爬虫類や両生類は、自分の体色を変化させる事で敵から身を守ったりする習性がありますよね。
我が家のエメグリ(イエアメガエル)も違わず、流木の上に長くいたり部屋が暗い状態が長いと、その本能から体が黒みがかっていたりします。
きっと、体色変化しているのは、エメグリの気持ちとは関係ないのでしょうけど…ね。
イエアメガエルは体色変化します
陽だまり一家は毎週末、本家で過ごして、夕飯を共にします。
当たり前ですが、エメグリ達はお留守番で…
帰宅したら、こんなに黒くなってます。
しかし、電気を点けて10分もしたら、元のエメラルドグリーン(名前の由来であるエメラルドグリーンピース色)になります。
子供達は初めの頃、カメレオンなどの体色変化は知っていても、実際にエメグリの変化を目の当たりにすると「エメグリが病気になったのではないか?」と心配していました。
今回は、爬虫類や両生類に多く見られる『体色変化』について、できるだけ簡単にまとめてみたものをお伝えしたいと思います。
体色変化する生き物は、皮膚に秘密がありました
①表皮と真皮
爬虫類や両生類で体色変化する生き物の皮膚は2層になっていて、外側を「表皮」、内側を「真皮」と呼びます。
体の色は、この2層の中でも真皮に含まれている色素を含む細胞「色素胞」によって作られたり、変化をします。
②真皮には色の層があります
真皮層も更にわかれていて、上部には「黄色素胞」、中部には「虹色素胞」、一番下には「黒色素胞」という色素胞があります。
「黄色素胞」は黄色〜赤色の色素の顆粒を含み、「黒色素胞」は黒色の顆粒を含んでいます。
「虹色素胞」だけは特殊で、色素顆粒からなっている訳ではありません。グアニンというアミノ酸の結晶で、この結晶が層状となり重なったところに光が当たると、層の中で光が反射や散乱して、青い色に見えます。この青が虹色素胞の色となるのですが、お馴染みの青魚の青光りした色と同じ仕組みです。
「黄色〜赤」、「青」、「黒」、この3種類の色を持つ細胞があり、それぞれの細胞の『見えやすさ』を調節することによって、体色が変化します。
③色の見えやすさを変化させる事で体色変化となる
ここから、少し複雑になるのですが、『見えやすさ』を変化させる主な役割をするのは、一番下にある「黒色素胞」です。
黒色素胞は、上層となる虹色素胞や黄色素胞の間に枝上の突起を伸ばして、それぞれの細胞を包んでいます。そして、その枝に送り込む黒色顆粒の量を調節することによって、『他の色素胞の見えやすさ』を変化させるのです。
枝に送り込まれる黒色顆粒が少ないと、黄色素胞や虹色素胞はよく見えやすくなります。反対に、黒色顆粒が多いと、他の色素胞が見えにくくなります。
具体的に書くと…黄色と青の2種類の色が混ざれば、カエルらしい緑色の体色になります。黒色顆粒により虹色素胞が包み込まれてしまうと、青い色は黒に隠されて、見えるのは黄色素胞(黄色〜赤色の体色)のみになります。さらに黄色素胞まで黒色顆粒に包まれると、青も黄色も見えなくなって、体色は黒くなるのです。
つまり、お留守番していたエメグリは、黒色顆粒によって黒くなっていたということです!
カメレオンが体色を変化させるのも、基本的には『色の見えやすさ』の仕組みよるものです。ただ、あんなに複雑に部分的に使いこなし鮮やかに使いこなしているところがすごいですよね。
④どうして体色変化が起こるのか 〜ふたつのメカニズム〜
体色変化のメカニズムは、大きく2種類に分類されます。
ひとつは『形態学的体色変化』と呼ばれ、人の日焼けやシミもそのひとつです。
色素細胞の増殖・分化・アポトーシス(生物が元から持っている機能で、細胞が構成している組織をより良い状態に保つために細胞死をさせる事)などにより、細胞組織内の色素細胞密度や色素沈着量の変化として、比較的長期にわたって進行する反応です。黒色素細胞(メラノサイト)の増殖や、メラノサイトから表皮へ分泌される色素顆粒の増加により、引き起こされます。
もうひとつが『生理学的体色変化』です。
色素胞の間で起こる色素顆粒の影響により、秒・分レベルの比較的速いスピードで変化が起こります。これがいわゆる爬虫類や両生類などに見られるカモフラージュ機能です。
この先は、イエアメガエルの体色変化のお話なので『生理学的体色変化』だけについて書き進めていきます。
⑤どうして変化が起こるのか 〜何が影響しているか〜
爬虫類や両生類の色素細胞の働きは、様々な環境因子により影響を受けますが、その中でも「光」が最も主要な因子となります。
そしてその光を最も感じ取る器官(場所)は眼球です。ただ、あらゆる生き物の中で、脳内にある光受容体(松果体など)や色素胞自体にも光を感じ取る働きがある事が明らかになっています。
眼から光を感じ取った場合の、体色変化の流れは、次のようになります。
眼球から色素細胞への光情報の伝達は、「神経系」や「内分泌系(ホルモン分泌)」によって行われます。
眼からの情報が神経系を通り脳または延髄・脊髄神経へと伝わり、それによって神経系や内分泌系からの情報や分泌物が作られて、体表の色素胞へ伝わってくることになります。そして変化が起こる仕組みです。
ただ、爬虫類や両生類では、神経系ではなく内分泌系がメインルートであることが多いそうです。
具体的に書くと…、両生類の場合は、眼球からの光情報は脳下垂体に伝達され、脳下垂体から分泌される黒色素胞刺激ホルモン(αMSH)という物質が色素細胞に伝達される事で、体色変化が行われると考えられています。
また以前は、体色変化を光制御するのは視細胞だけと考えられていましたが。最近の遺伝学的研究から(硬骨魚類の背地適応に視細胞は必要でないことが分かってきたりしたこと等により)、視細胞以外の「網膜ニューロン(水平細胞・アマクリン細胞など)」にも光受容分子が存在することが分かってきました。
⑥光を感じ取る場所は眼だけではない
眼からの光感受性の他に、『光感受性色素胞』といって「色素胞自体が光感受性を持っている」という例が、様々な動物において報告されて分かってきたようです。
つまり、皮膚で光に反応して、そこから神経系または内分泌系を経由して体色変化させるか、または反応したその場所で黒色顆粒を変化させるなりして体色変化をしている、ということです。
まだまだ研究でも分かっていない部分があるようです。
色素胞の中には、「光そのものに対して反応するタイプ」や「光を波長と捉えて反応するタイプ」など、動物の種類により様々なようですが、なににせよこれらの光感受性色素胞の中には、視物質または類似蛋白質のmRNA発現が確認されていて、これらの蛋白質が光感受性に関係しているようです。
まとめてしまうと…
簡単にすっ飛ばして深い専門知識を除いて書いてしまうと、体色変化というのは「光などの刺激を感じて、真皮層にある色素胞の見え方のバランスを変化させて体の色を変える」という事らしいです。
これは敵から身を守ったりするカモフラージュとして無意識で起こる反応でもあれば、交尾の時期に興奮状態となり意図的に体色を変えている場合がありますよね(後者は別のホルモン変化があるのでしょう)。
体色変化は意図的だったり無意識だったり…、難しくて深いです。
分かる範囲でもいいから理解すると、安心だし楽しい
ちょっと難しくて、長くなりましたが、飼育しているのだから、状態について知りたい事は調べたいです♪
私は医療系の大学出なので、いくつかの文献を読んでいて楽しかったです。
でも、子供達にもある程度は分かるようにと簡単にまとめるのは、結構難しくて…。
でも、漠然としていても、どこの部分が何に反応しているのか…、目に見えない細胞という単位でも、何が起こっているのか…、分かる範囲で知っておく事や興味を持つ事は楽しいと思います♪
今は高い文献資料や教科書などを買わずに、ネット回線さえあれば簡単に調べられる時代です。でも、そんな中でも文献や知らない言葉の羅列は子供にとっては難しいです。
今回は「難し過ぎて、読んでいて訳わからない」とならないレベルで書けたら…と思って書いてみました。
「知らない言葉はスルーしつつも、なんとなく仕組みが分かった感じ」を目指しました。
ちょっと疑問だったけど調べるのは面倒…、わかります!
でも、この記事で、「なんとな〜く分かった」だったり、「もっと興味がわいてきた」と思ってもらえたら嬉しいです。
そして、これはこれ。
飼育は飼育。として、エメグリとの暮らしを楽しもうと思います♪
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